私は音大を卒業した後、教える仕事をしながら機会があればコンサートなどで歌っていました。しかし結婚、出産を経て子育てに追われる毎日を送るようになってから、約6年間は全くと言って良いほど歌わない生活が続きました。このままフェイドアウトしていくのかな、などと思う時もありました。
子供が幼稚園に入って少し自分に時間が持てるようになった頃から、少しづつですが「もう一度歌いたい」と思い始めるようになりました。
しかし6年近くも歌っていないのにまた歌えるようになるんだろうかと不安もあり、歌を再び始めることに対してとても勇気が入りました。
そんな時、大学時代の同門下の後輩が「とても良い発声の先生がいるから」と私にある先生を紹介してくれたのです。
この先生は若き頃イタリアに留学しベルカント唱法を学んできた方で、当時イタリアで習っていた先生の元にはミラノスカラ座の歌手達も来ていたようです。
私がその先生のもとに始めて行った時、「声はテクニックなんだよ。」と言われたことがとても衝撃的だったのを覚えています。
それまでの私の概念では、ある程度その人の持っている声帯の良し悪しで声は決まると思っていたからです。
そして正しいテクニックを身につければ、何歳になっても声が衰えることなく維持することができるということでした。
通常は20代の時は高音を難なく出せた人でも30代、40代と歳を重ねるにつれ高音が段々と出なくなっていきます。ですがその先生の発声を学び始めて、私は高音域が20代の時よりもさらに出るようになりました。以前は歌えなかったコロラトゥーラ(高音をコロコロと転がして歌う)の曲も今では歌えるようになっています。
人は何かをやりたいと思った時、何歳になっても遅いということはないのだと思います。
私はこの以前より歌えるようになったという喜びと感動を一人でも多くの方に伝えていきたい、と思っています。
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